あけび掲載(平成二十九年九月号)
お産婆に逆さに持たれ背や腹を叩かるれども産声上げず
いたづらに時は過ぎゆき産声のなきこと「三十分」と祖母言ひたりき
ひくひくと戦きつつもわがいのち呼吸(いき)を求めて足掻きをりしや
運よくも鼻や口より羊水の流れ出づれば弱々しく泣く
母も飢ゑ乳(ち)も出でざりき空腹のわがいのちこそ試練の日々か
誕生日過ぐるも首の座らざれば近くの医者に診せにしと言ふ
一寸した育ちの遅れと軽く言ふ言葉にかへりて不安を覚ゆ
東京の病院いくつか巡りゆき「脳性まひ」と告げられたりき
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