歌劇『紫苑物語』世界初演を観て  〜あけび掲載 (令和元年八月号)


是非観たきオペラにありき嘗てわれ石川淳の原作読めば
語り口粋にて密にさはいふもシュールに終はるその小説は
素晴らしき西村朗の美しく劇的なれる曲にありしか
美しき序奏に続き公家たちの「たうたうたらり」のリズム弾くる
平安の歌の名家に生まれしを宗頼疎みて弓学びけり
ひとすぢの歌を矢に換へ宗頼は終には仏まで射貫かむとす
歌劇中おもむき深き愛の場はなんと狐の化身との夜
指揮者なる大野和士と作曲者詩人らによる力作なりき