眠れる青年  〜あけび掲載 (平成三十一年四月号)


入院時意識なき子と同室になりしことあり夜は機械音のみ
呼吸器に助けられつつ生くる子の髭を剃るなど母御通ひ来
遠慮がちにカーテンを閉め世話するを声を掛くれば話弾めり
数年前まで高等部にて受け持てる子らの名前を聞き驚きぬ
筋ジスの障害持てるも事故にあひ対応遅れかくなりしとふ
もし事故のなければクラスの生徒かと思へば愛しそのいのちかな
意識なしといへども身体の快・不快表情に出づとナースさへ言ふ
医師来り腕自慢せし帰り際「ま、お母さんの玩具といったところですな」