映画二題  〜あけび掲載 (平成三十一年三月号)


脳死とは人の死なるやその問ひを『人魚の眠る家』に確かむ
設定はやや不自然と感ずれど問ひの重さをよくまとめをり
伸ぶる髪切りて整へ願ひ込めなにくれとなく世話をする母
死体をば連れ回すとふ噂にて事故に遭ひし娘の母追ひ詰めらるる
映画なる『こんな夜更けにバナナかよ』わが来し日々に重なりて見ゆ
医師にさへ責任持てぬと言はれつつ筋ジス鹿野のいのち羽撃く
突拍子なき要求に介助者ら総てたびたび振り回さるる
今を生くただ今を生くそによりて虚飾の関はりはぎ取りてゆけ