秋雨の晴れし日 その二  〜あけび掲載 (平成三十一年一月号)


この坂を上ればやがてその先に南町とふ信号の見ゆ
信号の手前にありし八百屋など今は面影すら見えずなり
わが部屋ゆ路地を出づれば八百屋あり魚屋肉屋もありて事足る
肉屋にてカツやコロッケ揚げをれば匂ひにつられ時に買ひたり
北へ帰る君との距離を縮めむと我足指(そくし)にて文を認(したた)む
わが部屋の角を曲がれば正面に酒屋の見えて隣は参道
真夜中に書き物しつつ木刀をやをら掴みて行きし境内
家にてはなし得ぬことの数々を経験したり良きに悪しきに