細川俊夫『松風』・再び  〜あけび掲載 (平成三十年七月号)


体調は優れざれども『松風』は是非聴きたしとあへて行きたり
ダンサーの他にコロスや歌手らにも風など表す振り付けをなす
妄執の果てなる汐汲み女ふたりかの行平を求めさまよふ
身の上を僧に語れるそのうちに松風次第に狂ひ舞ひゆく
曙に数多の松が枝落ち来りそれと知らるる小夜嵐かな
改めて世阿弥の能の特異さを感じてをりぬその不思議さも
楽音を自然音にしも寄り添はせそをダンスともコラボさせたり
日頃より掛かり付けなる女性医師吾に付き添ひて鑑賞をせり