細川俊夫『松風』  〜あけび掲載 (平成三十年五月号)


美しきオペラなりけりサシャ・ヴァルツ演出・振付これ活きゐたり
浦波の寄せては返す音(ね)に続きやがて楽の音重なりゆけり
息の音のおほき歌唱のそれぞれに風のたゆたひ感じさせをり
その響き和楽器めくもむべならむ静寂と音は等価なりけり
鈴の音とともに現る旅の僧彼岸と此岸の仲立ちとなる
皎々と輝き増せる月のもと汐汲みの場の印象ふかし
村雨に諫めらるるも松風はすべて引き受け狂ひ舞ひたり
風音や雨の滴る水の音に余さず念ひは果されしと知る