障害の身老いきたりて  〜あけび掲載 (平成二十五年四月号)


手から手へ都会の底に渡さるるわがいのちこそ漂流せるかな
手の主も様々なればその主のあれやこれやにわれ巻き込まる
介助者と問題かかへるときどきは二人でゐるは怖きもありたり
わがための事業所ひとつ持ちたれど人事権さへ揮ふ能はず
葦舟に乗せられ漂ふ蛭子われ六十年を過ぎて漂ふ
生来の麻痺と老いとの重なりてあはれこの身の哀しかりけり
君よもし世の通念を捨て去れば恋ひ睦みあひ楽しかるべし
老いらくの恋の身悶え気の利ける軽き一言言へず過ぎけり