母逝く

日暮時母危篤との報あるもすぐ行けざれば気を急きてをり/病院を覆へる闇の明け初めてたらちねの母は身罷り給ふ/祭壇の上なる母の亡?に言ひ得しはただ「ありがたう」とのみ/亡き母に溢るる感謝の沸きくれば皆にも覚ゆ同じ思ひを/鉛筆の芯を折りつつ手にて字を書かせむとせし母の厳しさ/言葉一つ使ふに厳しき母なれば我が美意識はそに依りたるや/世の中の差別と闘ふその時し母の助けのげにありがたき/母よ母我を育てしその母よ控えめなるに芯の通れる