新年を迎へて

耐ふること多き一日(ひとひ)を重ねつつけふまた仰ぐ初日の光/N響の第九の後は数々の来日公演聴けば年明く/新春を言祝ぎつつも不況ゆゑ職に就けざる人らを思ふ/庭に向かひ居間に置きたるテーブルに車椅子の母は本を読みをり/年明けて家を見舞へば我が話す言葉は母の耳に届かず/復唱をお願ひしつつ一時の会話を母と楽しみをりぬ/妹人の見つけし古きアルバムを元に会話は弾みてゐたり/口をつきかく出できたり「おかあさんに育ててもらってよかったよ」とは