深みゆく秋  〜あけび掲載 (平成十八年十二月号)

夜顔(よるがほ)の咲く夕まぐれ何処(いづく)より聞え来るや秋の虫鳴く/秋の虫窓下に鳴けり鉄筋と舗装のみなる都会の隅に/椋の枝にのぼり来るや秋の虫わが窓の外に涼しげに鳴く/幻聴に虫の音しげく混じりをり去年(こぞ)術後なる病室の内/昼は蝉夜は松虫の騒がしきけふ夜顔(よるがほ)のなほ開きをり/秋の夜の椋の葉陰にアヲマツムシここぞと鳴きて長雨の降る/市街地の樹上に鳴ける松虫の外来種と聞き驚きをりぬ/夜顔(よるがほ)の蔓の葉ごしに入る風に混じる香りは金木犀か