一瞬の花見  〜あけび掲載 (平成十八年九月号)

十分(じつぷん)の間(ま)も坐るにはつらきゆゑ花見せむともわれ言へずをり/「せっかくの満開だから」と家(や)に近き桜の古木をあへて見にゆく/舗装にて覆ひつくさる道の辺の桜は今も誇らしく咲く/電線の束を十字に通しつつ広ぐる花枝(はなえ)はあたりを制す/風強く荒れ模様なる街角の満開のさくら花を放たず/岩のごと粗き幹にも咲き出(いづ)るちひさき花の一輪二輪/生け垣に木造の家(いへ)もいつの間かマンションとなる花の背景/桜へと巡る一年(ひととせ)繰り返しまた来るとはつゆも知られず