フルトヴェングラー讃(1)  〜あけび掲載 (平成十七年三月号)

戦時下の祖国に残り演奏をつづけし汝(なれ)のつよき念(おも)ひよ/爆撃に晒されしベルリンその下(もと)の演奏会に聴衆あまた/演奏のさなかにありし停電も汝(なれ)が想ひをくじく能はず/指揮台に身を捩(よぢ)るごと立ちし汝愛なる楽を伝へて止まず/緩急を自在にゆらし楽員も聴衆さへもひとつになせる/旋律を奏づる瞬時(とき)にその曲のすべて見ゆると汝はいひたり/演奏は一度かぎりと録音をきらひし汝(なれ)の音楽観はも/録音を嫌ひし汝の演奏をセピア色なる響きにて聴く