武満徹に寄す  〜あけび掲載 (平成十六年五月号)

静寂を音に成せるや絶妙の間をおきて鳴る一音一音/虚空より迫り来れる音ひとつ張りつめし世界これにてぞ成る/硬質の音の糸にて紡ぎ出すそのいろどりにわれ驚けり/綾なせる厳しき響き意外にも胸に迫りてこみあぐるあり/管弦に琵琶尺八の絡みつつ『ノヴェンバー・ステップス』ここに極まる/家持の「いささ群竹吹く風の音」のかそけさ弱音に聴く/笙の音(ね)を受けてひろがる管弦の美しき響きに涙こらへぬ/「遠く」へとドビュッシーの海を越えゆくや谷川(たにかわ)の詩を楽(がく)に乗せつつ